2013年5月26日日曜日

リン・フォルケス(Llyn Foulkes)『 失われたフロンティア (Lost Frontier)』Documenta (13) 他

リン・フォルケスは1934年生まれのアメリカのアーティストで、音楽家でもある。『失われたフロンティア』を見て、なんかミッキーの顔がどこかで見たような…と思っていたら、前年のヴェネチア・ビエンナーレのメイン・パヴィリオンのエキシビション(ジャルディーニにある国別じゃない展覧会)に作品が展示されていた。そのときの作品は、いかにもな政治風刺的ポップアートで、それほど印象に残らなかった。『どこで間違えたのだろう(Where Did I Go Wrong)』(1991)『大統領閣下(Mr. President)』(2006)の二つは、湾岸戦争の開戦を告げる新聞を手に「どこで間違えたのだろう?」と自問するスーパーマンと、一ドル紙幣のジョージ・ワシントンの肖像画にミッキーの顔をつけたもので、コンセプトは明白だけれど、面白いのかしら?そう言えば、スーパーマンのモットーは「真理と正義とアメリカンウェイ」だった。スーパーマンの間違いは、アメリカンウェイの間違いでもあった。
しんぶんの小見出しに
「クウェート」の文字が見える。
一ドル紙幣のワシントン



Documenta (13)では、フォルケスは音楽家として、自作の楽器を使ってパフォーマンスも行った。それは見ることができなかった。幾つかyoutubeにアップロードされているが、面白いけれど、そんなに前衛的だというわけではない。

造形作品は暗い部屋に鑑賞者から数メートルの距離をおいて二つ展示されていた。特に、『失われたフロンティア』は、『大統領閣下』と同じ、ミッキーの顔をつけた兵士(なにか民族衣装をつけているように見える)が廃墟のように荒れたロスアンジェルスの街を望む高台に立っている風景だ。手前には死んだ山猫、二人の男が描かれている。写真だとこの作品はいかにも立体ぽく見えるのだけれど、実物は、数メートル距離があるので、最初私は普通の絵だと思ってしまった。こちらの移動につれてホログラフィのように形が微妙に変わるので立体だと気づいた。とても手をかけた(1997-2005)、そのことに感動してしまう作品。もう一つの「目覚め(Awakening)」(1995-2012)は老いた夫婦の寝室が描かれているが、これもミクストメディアの立体作品だ。グロテスクなユーモアは、作者がそろそろ80才になると考えると、荘厳なおそれをおびる。
少し距離を置いて見させられるので、ややフラストレーションを伴いながら細部を確認するという見せ方の仕掛けのせいかもしれない(私は双眼鏡を取りだしたもの)けれど、メイン会場の絵画っぽい作品の中では一番見応えがあった。


Foulkes 失われたフロンティア
Foulkes目覚め

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