2013年3月21日木曜日

カウラの班長会議(2)(しんぶん赤旗)

「カウラの班長会議」の劇評が「しんぶん赤旗」の20日(水)付に掲載された。今大阪にいて誌面のスキャンが出来ないのでテキストをアップロード。


一九四四年八月五日、オーストラリアのカウラにある捕虜収容所で、千人を超える日本人捕虜が暴動・脱走を試み、二三五人が命を落とすという痛ましい事件が起きた。燐光群の「カウラの班長会議」(坂手洋二作・演出)はこの「カウラ事件」を題材にしている。
カウラ事件には二つの特徴がある。第一に、収容所での日本人捕虜の待遇は概して人道的だったことだ。第二に、暴動は指揮官の命令によってではなく、全員の無記名投票によって「民主的」に決定されたということだ。「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓に支配された捕虜は、いわば死に場所を求めるためだけに蜂起した。
坂手は、この悲惨な事件を単純に舞台化するのではなく、それをテーマに劇映画を作る女子学生という外側の視点を持ち込んだ。映画のスタッフ十八人は、各自一人の兵隊のイメージを作り上げるように求められる。その結果、「カウラ」の兵士たちの問題は、「フクシマ」後の日本の状況に相通じるものになって行く。
女子学生たちのカウラ収容所は実際よりも穏やかで民主的に見える。それでも、彼らは戦陣訓の暴力に抗えない。私たちの日本はそれよりはましになっているのだろうか。様々なしがらみが、本当は望んでいない選択を自ら行うように私たちに強いていないだろうか。作品が突きつける問題は大きい。
舞台は、四十人近い登場人物の一人一人を良く描き分けた。群舞のような動き、結末のひねりと問いかけも効果的。

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