とても面白かった。安珍清姫の説話は幾つかの異版があるが、娘ヴァージョンと寡婦ヴァージョンの両方を舞台化する。また、その後日譚の「鐘供養」物語も白拍子の出てくる能の話の他に郡虎彦のおどろおどろしいヴァージョンも舞台化し、物語圏の持つ広がりを90分に収めようとしたのは意欲的だ。一番有名な白拍子の話がきちんと回収されなかったけれど他の物語はほぼ最後まで示される。
上演も、語り口や動きが様々なスタイルのつぎはぎを徹底化しているのが面白い。今昔そのものの語りはいま風の感情表現と接続され、新喜劇のようなコミカルな動きは時代がかった見栄と接続される。昔『オイディプス』を見たときも、複数様式の並列が面白いと思ったのだけれど、この舞台ではそれが徹底的に「多数化」されていた。能・狂言・歌舞伎・新劇・アングラの動きの特徴が、ぎゅっと詰め込まれている。勿論、一つ一つの様式の完成度はとても高いというわけではないし、またそれが目指されているわけでもない。ある種の「見本市」的な舞台で、そのニュアンスがどこまでルーマニアで通じるかは分からないけれど、日本人としては納得の面白さだ。アフタートークは、「女の人こわい」以上の意味がない話を「女性原理」とか言い出した時点で聞いていても仕方がないと思い退出。
ラスト 黒い桜の花が舞うのだけれど、桜だと思わなかったorz |
さて、今年日本ではシビウ国際演劇祭を「ヨーロッパ三大演劇祭」と呼んで持ち上げるのがはやりみたい。今年のプログラムを見たら、期間は一週間ほど(六月七日から十六日まで)だけれど朝から晩まで何かしらやっているのが素敵ななかなか盛んな演劇祭。海外からの参加は半分くらいじゃないのかしら。2007年が一番規模が大きく70カ国から2500人のゲストがやって来たらしい。楽しそうだ。
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